SwiftMRのディープラーニング・アルゴリズムの詳細…

By Geunu Jeong, Head of SwiftMR Research at AIRS Medical

 

SwiftMRは、MR画像の品質を向上させるディープラーニングベースの製品である。では、このような卓越した再構成性能を実現するために、このアルゴリズムは既存のディープラーニング・アルゴリズムとどう違うのだろうか。その答えは、AIRS MedicalがarXivで発表した論文「All-in-One Deep Learning Framework for MR Image Reconstruction」にある。技術的に難しい内容ではあるが、この記事で順を追って理解を深めていただきたい。

 

まずMRI検査が行われると、k空間データと呼ばれる生データが得られる。k空間データの各点をサンプルと呼び、k空間データのサンプル数や各サンプルのノイズレベルは、設定されたスキャンパラメータによって異なる。スキャン・パラメータがより長いスキャン時間を使用するように設定されている場合、より多くのサンプルを得ることができ、各サンプルはより低いノイズ・レベルで得られる。一方、スキャン時間が短く設定されたスキャンパラメーターでは、より少ないサンプルしか得られず、それぞれのノイズレベルは高くなる。その後一連の数学的演算を行い、このk空間データは体内の構造を描写するMR画像に変換される。ここで画像の質というのはk空間データのサンプル数と各サンプルのノイズレベルに依存することに注目していただきたい。

 

Geunu - how algorithm works 1

ディープラーニング・アルゴリズムによってMR画像の画質を向上させるということは、本質的には、画像を「より多くのサンプル数と低いサンプルノイズのレベルで得られたk空間から作成された画像」に変換することを意味する。ここで、「より多くのサンプル数」の部分に着目していただきたい。より多くのk空間サンプルを取得するには、より高密度にサンプリングする(均一/ランダムアンダーサンプリング係数を低くする)、サンプリング範囲を広げる(kmaxを高くする)、より大きく楕円状にサンプリングする(楕円サンプリング係数を高くする)、より対称的にサンプリングする(部分フーリエ係数を高くする)などの方法が存在する。これらの方法は、それぞれ数学的に異なりつつ画質に影響を与え、他の方法とは独立し代替不可である。例えば、サンプリング範囲を広げることと、より対称的にサンプリングすることは、どちらも解像度を向上させるという共通の利点を有するが、サンプリング範囲を広げても、非対称サンプリングによって引き起こされるブラーリングを軽減することはできない。

 

「SwiftMRのディープラーニングアルゴリズムの性能の鍵は、
これらすべての側面で同時に画質向上を達成することにある。」

これを実証するため、同じ画像を複数回処理し、その都度、追加のアスペクトでの改善を順次取り入れ、その変化を観察した。各ステップでの再構成画像を下図に示す。画像1では、k空間サンプルノイズの改善のみが考慮されている。画像2では、さらに周波数方向のサンプリング範囲を広げている。画像3は、さらに位相方向により対称にサンプリングすることを加えたものである。画像4では、位相方向のサンプリング範囲の拡大も行なっている。最後に、画像5では、スライス方向のサンプリング範囲の拡張を追加している。それぞれのステップで、新たに追加されたアスペクトに対応する画質の向上が見てとれる。これは元の画像とSwiftMR処理を施した画像5を比較していただくと、多次元的な画質向上が達成されていることがさらにわかりやすくなる。またその他のアスペクトは、原画像で既に最大であったため、下図の例から除外している。

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ここまで、SwiftMRの驚異的な性能の秘密である多次元的な画質向上について紹介してきた。これらの様々な側面にわたる画質向上の組み合わせにより、解像度とSNRの卓越した向上がもたらされる。この点がSwiftMRが、1つの側面(均一/ランダムアンダーサンプリング係数)のみで画質を向上させる既存のほとんどのディープラーニングアルゴリズムと異なる点だ。では、このような多次元的な画質向上を実現するために、ディープラーニングの学習はどのように行われたのだろうか。詳細な説明は論文を参照されたい。(https://arxiv.org/abs/2405.03684

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